チャオ!echoes開発部のPM、nozawa です。
本日は、私たちの開発フローに生成AIを組み込んだ取り組みについて、その目的と実施例を共有したいと思います。
背景:多国籍チームの言語の壁とその克服
私はベトナムのメンバーと一緒に仕事をしており、よく直面する問題の1つに言語の壁があります。
要件定義などの資料作成をしてもらう際、日本語の文章が整っていないために通常よりも翻訳と理解に時間がかかったり、誤った情報が伝わってしまうなどが原因でリリースが遅れるなどの課題があります。
以前から開発フローの改善を進めてはいますが、さらなる生産性の向上を目指し、生成AIを取り入れてみました。
※上記開発フローです。
導入前の検討点
導入にあたり、新しいルールを追加せず、学習コストを最小限に抑えつつ開発フローに組み込む方法を考えました。
細かなルールで導入が続かない、新しいメンバーにとって辛い状況を作らないように注意しました。
導入例
主に2つの方法で導入しました。
1.気軽に利用できるAIインターフェースの導入
2.開発フローに無理なく組み込む
それぞれ行ったことを詳しく説明します。
1. 気軽に利用できるAIインターフェースの導入
Chromeのブラウザ上でテキストを選択するだけで、生成AIに文章をチェックしてもらうことができるChrome拡張機能を開発しました。
このツールは、Google Chromeの拡張機能として使え、書類や報告書などの文書の質を向上させることができます。
このツールの特徴は、ChatGPTのチャット形式のUIよりも、もっと手軽に使えることです。
これは、開発者が自分の文章をより良く書くための機会を増やすことを目的としています。
2. 開発フローに無理なく組み込む
echoesでは、Backlogというサービスを使って開発タスクの管理と要件定義の作成を行っています。
Backlogの利点は、タスク管理がしやすいことと、豊富なAPI機能が自由に使えることです。
導入2-1:
要望チケット作成時に自動で生成AIによるレビューを行い、メールで通知する機能を作成しました。
レビュー内容は、「チケットの採点」、「指摘」、「修正案の提案」、「ベトナム語翻訳文」、「チケット内容」です。
内容の上書きはせず、作成者が内容を受け入れるか判断します。
導入2-2:
新しい「レビューボタン」をBacklog上に追加しました。
このアクションボタンを使うと、文書を作っている人がボタンを押すだけで、文書のチェックをするための新しい子チケットタスクが自動的に作られます。
さらに、要件定義から単体テストや受け入れテストで何をテストするべきか、をまとめたテスト観点のチケットも、必要に応じて自動で作ることができるようになりました。
導入2-3:
受け入れテスト項目の自動生成機能を作成しました。
この機能は、先行するプロセスで精度を高めたチケットと単体テスト項目を活用します。
今までレビューなどの適応は任意だけど、
「自動生成の受け入れテスト項目を使って楽をしたいのならば、これまでの過程をしっかり行ってチケットの精度を上げてね」
というメッセージも込めています(笑)。
導入2-4:
私たちは、最終段階として、新しいバージョンのソフトウェアがリリースされる際に、そのソフトウェアの新機能や改善点などをまとめた文書(リリースノート)を自動で作成する機能を作成しました。
これにより、新しい更新内容を手間なく伝えることができます。
実はリリースノートは開発者から共有したことはないため、初の試みです。
今回、全てのリリースタスクのチケット内容を集約・校正し、リリースノートを生成します。
当然内容は完璧ではないため、最終的には人の目でレビューされます。
面白い点として、リリース日を「12月21日」と設定したとき、以下のような人間らしい文章を生成AIが作成してくれました。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 |
みなさん、年末に向けて忙しい日々をお過ごしでしょうか?寒さに負けずに元気にしていますか? 今日は、最近のアップデート内容を皆さんにお知らせさせていただきます。 コーヒーを片手に、どうぞご覧ください! ...(タスクの分類分けした説明文)... これらの更新により、ご利用の皆さまがさらにスムーズに作業を進めることができると確信しています。 なにか疑問点や商品に関するご質問がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。 年末ですし、体調を崩さないように暖かくしてお過ごし下さいね。それでは良い年をお迎えください! それでは、また新しい情報でお会いしましょう! 心から感謝を込めて、 |
この人間より人間らしい気の使い方には感動しました。
最後に
この取り組みに加えて、社内のアワードにもノミネートされ、プレゼンテーションの機会をいただきました。
結果として賞を受賞するには至りませんでしたが、この経験は私にとって大きな学びとなり、今後の開発プロセス改善への一層のモチベーションとなりました。
今後もより効率的で生産性の高い開発プロセスを目指して参ります。